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AEMO( オーストラリアのエネルギー市場オペレーター)を舞台とする巨大なデジタルツインの構築

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OPA-RTの出版購読型通信を用いた協調シミュレーション(CO-Simulation) RT-LAB Orchestraが、EMTシミュレーションソフトHYPERSIMのモデルにも使用できる様になりました。

Fig.1 AEMOが管理するオーストラリア東海岸系統
ここでは、AEMO東海岸系統全体という、非常にスケールの大きな協調シミュレーションの紹介をいたします。
しかし、今回の取り組みにおいては、この協調シミュレーションも実はまだ全体のほんの入り口にすぎません。

組み上げた協調シミュレーションを、本物の東海岸系統を基軸としたデジタルツイン・システムのツインズ(双子)側として連携させる事で、Fig.1に示すようなオーストラリア東海岸系統の規模の予測シミュレーションを行う、巨大なデジタルツインを構築しようという構想が、今回のお話です。


1. 巨大なAEMOのシステム模擬に協調シミュレーションを活用する

巨大なシステムのシミュレーションには協調シミュレーションが最適です。

協調シミュレーションと言えば、FMI(Functional Mock-up Interface)がそのインターフェースとして有名ですが、協調するノード同士の相互依存が強い事から実装における柔軟性の低さやトラブルシューティングの高難度化といった課題がありました。

それに対してOPAL-RTがRT-LAB Orchestraで提案するのが出版購読型通信というインターフェース仕様です。出版購読型通信には、ノード同士の相互依存を切り離すことが出来る特徴があります。
これにより、インターフェース構築の敷居が下がる事はもちろん、それ以外にも、例えばノードAが不具合などで止まってしまった場合でも、全体の協調シミュレーションが止まってしまうことなく進行できるので、ノードAの出すはずだった信号を受け取るノードを例えばノードBとすると、シミュレーションがエラーで強制停止しなければノードBが信号を受け取れないとエラーを出せる様になります。

これにより問題発生時にも原因の早期発見が出来る特徴があります。
RT-LAB Orchestraの特徴は、協調シミュレーションの構築時で最も重要な、通信インターフェースの整理と、トラブルシューティングの円滑化にあります。

Fig. 2 風力発電プラントの各種DLL
AEMO東海岸系統全体のモデルはPSCADで書かれています。
AEMO東海岸系統全体と一口に言っても、これは多くの発電所などを含んだ非常に規模の大きなモデルです。
このモデルの中に配置されている発電所は、それぞれ異なるメーカーの発電プラントで、多種多様なプラントが系統内に混在しています。

例えば、PSCADモデルの中に無数にある発電プラントのうちの1つを例にとっても、Fig.2に示すように、そのシミュレーションの演算には様々な演算DLLを持っています。
それぞれのメーカーのそれぞれの発電所が、それぞれの演算方式(PMU測定やハイレベルPQ制御、風力測定、ローカル制御、コンバータ制御)の定義をDLLで持っていますが、そのDLLはそれぞれ実行時間や演算負荷が異なるため、これはそのままではリアルタイム・シミュレーションには利用できません。

以上を踏まえてAEMO東海岸系統全体をリアルタイム・モデルとしてみた場合、膨大な数の電力プラントノードが、それぞれ多くのDLLを持っており、更にそれぞれが異なる負荷とタイムレートで動くという、極めて複雑な全体像が見えてきます。

これを整理するのが、RT-LAB Orchestraの役割です。インターフェースの柔軟性に定評のあるRT-LAB Orchestraの出版購読型通信を用いて、この膨大なノードのDLLとインターフェースを整理し、統合します。


Fig.3 IEEE 39母線システムの変換例
今回、RT-LAB Orchestraに利用できるようになったHYPERSIMのモデルは、元々PSCADモデルをインポートする機能を有しています。

PSCADモデルをHYPERSIMに取り込むことで、AEMO東海岸系統全体のモデルはRT-LAB Orchestraの協調シミュレーションに参加することが出来る様になります。
以下のFig. 4にHYPERSIM/RTLABシステムの構造を支援します。

Fig.4 HYPERSIM/RTLABシステムの構造
この際に重要になる事は、PSCADモデル上に描かれた、それぞれの電力プラントモデルが使用している全てのDLLを、リアルタイム・シミュレーションのプラットフォームであるHYPERSIMとRT-LABがモデルと一緒に取り込まなくてはならない点です。

シミュレーション全体を統括する協調シミュレーションはRT-LAB Orchestraが担い、膨大な各ノードのインターフェースを整理し、結合して、ひとつの巨大なシミュレーションを構築して行きます。


2. データベースの活用

ここまでの話にありました様に、巨大なシミュレーションを構築するには、マルチノードの構造のモデルを構築する事の出来る、協調シミュレーションの利用が欠かせません。
しかし、それはプラットフォームの混在も意味します。

Fig.5 瞬時値/実効値統合データベースを起点とした各種ソフト対応総合シミュレーションシステム
その整理の為に、OPAL-RTはFig.5 に示される様な、PSCAD、EMTP、PSSE PowerFactory、CYME、GridLAB-D,GridPACK、ETAPといった、様々なプラットフォームの連携を構想しております。

現実にはプラットフォームのすべてがデータベース化されているわけではありませんが、統合データベースに構築していく構想を、OPAL-RTは持っています。


3. デジタルツインの双子の兄(実系統)と、弟(協調シミュレーション)

ここまでは協調シミュレーションの構築に至るまで話をいたしました。

しかし、シミュレーションは入力が無ければ満足には機能しません。デジタルツインを行うには、実環境での生データが逐次、リアルタイムにシミュレーションにも、等しく入ってこなくてはなりません。
デジタルツインとは、その名の通り双子(ツインズ)のシステムを意味します。

双子の兄は実環境が担います。双子の弟は、ここでは協調シミュレーションが担います。
兄は実環境で実際の実機(実系統)の働きをし、弟はシミュレーションで予測演算を行います。

協調シミュレーションは、実環境と同じ情報の入力がリアルタイムに入ってくることで、はじめてデジタルツインのツインズ(双子)の役割を担う事が出来るようになります。
それを可能とする為に必要となるのが、先に挙げたデータベースと、クラウドコンピューティングです。


4. 巨大なデジタルツインを構成するクラウドコンピューティング

今回、OPAL-RTはクラウドコンピューティングのプラットフォームとして、Microsoft Azureを採用しました。

Fig. 6 接続シミュレータツールのハイレベル・アーキテクチャ
Fig.6はMicrosoftのクラウドコンピューティングサービスMicrosoft Azureを用いた接続シミュレータツールの概要です。
この中で、HYPERSIMの並列化計算やテストの並列化が行われます。
クラウドコンピューティングは、実質的に無制限と言って良いリソースを有しますので、これにより複数のテストキャンペーンを並行して行う事が出来る様になります。

また、クラウドコンピューティングのプラットフォームにAzureを使用している事で、データプライバシーセキュリティの管理プロセスも付随するので、セキュリティの問題も同時に解決する事ができます。


5. まとめ:デジタルツイン構築のためのキーとなるポイント

デジタルツインの実現には、インテグレータや製造メーカからのプラントの正確なモデル(もしくはオンラインモデル同定)の提供の可否が非常に重要なファクターとなります。

インテグレータやメーカーの協力が得られなくては、プラントの使用している各DLLの十分な理解が出来ないので、その統合も出来なくなりますので、これでは正確なモデルの実現は出来ませので、デジタルツインにはインテグレータやメーカーの協力は不可欠です。

協調シミュレーションの実現にはプラントのコントローラDLL実装標準方法の一般化(整理)が重要になります。

直流送電、FACTS機器、太陽光発電PCSなど分散電源用系統連系インバータなどの増加に伴い、それらの変換器の動作を詳細に模擬した系統解析モデルが電力系統解析に必要になっていますが、メーカーの知的財産保護などのためモデルが構築できない問題が深刻になっています。
これを解決するため、CIGRE作業会WG B4-82で、電力運用者等が機器メーカーにモデル提供を要求する際に参考とするガイドラインを作成しています。
HYPERSIMのクラウド機能(クラスター)を活用する事で、モデルを並列化するのと同時に、複数の様々な不測事態をシミュレーションで予測テストすることができます。

等々、こうしたハードルを越えていく事で、はじめて巨大なデジタルツインが構築されてゆきます。
この様な巨大なデジタルツインが出来上がる事で、実系統環境の対となることの出来る、極めてスケールの大きな予測シミュレーションが実現されます。



オーストラリアのエネルギー市場オペレーター
(Australian Energy Market Operator: AEMO)の
現状と将来について説明します。

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